2026.08.07
浅井企画所属、お寺仏像大好きピン芸人のみほとけです。南無〜
今回は、7月14日火曜日から始まった大注目の展覧会
東京国立博物館 平成館
弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」
のレビューをしてまいります!
みほとけなりに、見どころ解説と、鑑賞ポイントを紹介しますね。

展覧会ポスター@東京国立博物館 正門
弘法大師、すなわち空海の生誕1250周年を記念した今回の展覧会。
都が奈良から京都に移る平安時代の初め、空海が中国から完全な形で日本に持ち帰ったのが「真言密教」です。
密教は言葉で表し難い深遠な世界だからこそ、
仏画や仏像、法具といった「仏教美術」で表すことが極めて重要になります。
歴史の中で真言宗はさまざまに分派したのですが この記念すべき年に主要な16派の総本山・大本山である十八本山が一致団結!
日本中の格式高い寺院から、 門外不出の「不思議で、緻密で、美しくて、怖くて、驚く」 一級品の密教美術が集結しました。
さらに見所は、
今ここで拝めちゃうの?!という“秘仏”が山ほどいらっしゃって一斉ご開帳状態。
貴重なお像ばかりです。
ぜひ味わいに行って欲しいと思います。

展覧会図録
「生誕1250年」って、現役アイドルでは見ることができない日本一ご長寿な生誕祭です。
超簡単に空海の人生を振り返ってみましょう。
・ 天才の誕生:
香川で生まれた空海は、幼少から天才的な才能を発揮して僧侶として数々の奥義を体得。
・ 密教修行のため唐へ:
30歳で唐(中国)に渡り、恵果(けいか)和尚からわずか2年で真言密教のすべてを継承。
・ 国家と庶民に愛される:
帰国後は天皇や貴族の祈祷を任される一方、庶民からも絶大な支持を得ます。43歳で高野山を開山。
・ 今も祈り続けている:
62歳で「みんなが幸せになるまで祈り続ける」と高野山の奥の院に入られました。これを入定(にゅうじょう)と言い、空海は”死んでいない”。なので今もお誕生日をお祝いするのです。
(真の生誕1250年イヤーは2023年でしたが、タイムラグがあって記念展覧会は今年に開催)
そして1000年以上の時間をかけて、真言密教の教えも、弘法大師への信仰も広がっていきます。
時代のニーズや地域に合わせて、その流れは主要な16派に派生しました。
「伝説のラーメン店が、味を変えずに優秀な職人を各地に輩出し、のれん分けしていった」
ようなもの。
今回の展覧会で全部が一致団結するとは。
ここぞ!という意気込みなのを感じました。
十八本山のリストを要チェックです。
それぞれ本山の寺紋のグッズも出ているので要チェック。

十八本山の説明パネル

弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」 東京国立博物館 2026年 展示風景
展覧会の内容に入って参りましょう。
第1章「空海と真言密教」
ポスターのセンターでもある
秘仏「弘法大師坐像(江戸時代 17世紀 和歌山・金剛峯寺)」がいきなりお出迎え。
※撮影禁止でした
「お、お大師様!!」
とまず平伏しました。
「お誕生日おめでとうございます」と続いてご挨拶(南無大師遍照金剛)。
エラのはった顔、鋭くも温もりのある目つき
「これぞ空海さまだ」
という堅実なヴィジュアルです。
高野山金剛峯寺にて、何度も火災から免れながら守られたお像は 経年のお香の煙を浴びて黒々と輝く姿がかっこいい。
こちら、秘仏です。
初っ端からご開帳されているんです。
そして続々と、怒涛の仏教美術が登場します。
密教の仏様のビジュアルがどういうものかの説明書である、「図像」が載った巻物。

重文:高雄曼荼羅図像 胎蔵界 巻第一(平安時代 12世紀 奈良・長谷寺) ※ 前期展示
空海が実際に唐から持って帰ってきた説がかなり濃厚な密教の法具 「金銅錫杖頭(中国唐代 8世紀 香川・善通寺:国宝)」。
マジでかっこいいですね、唐で空海は、恵果和尚よりわずか数ヶ月で密教を完全に習得し、たった2年で帰国。帰国の際には、日本でも完全な密教を実践できるように、莫大なお経や密教法具を唐で作らせ、日本に持ち込んでいるんです。その空海直々に持ち込まれた法具だという、空海さんの息のかかった道具だという、そういうものです。
(ここまで2秒でしゃべりました)

国宝:金銅錫杖頭(中国 唐時代 8世紀 香川・善通寺)
など
私が脳内で大絶叫したのが、高野山霊宝館からお出ましいただいた
鎌倉時代のスター仏師・快慶作の 「深沙大将(じんじゃたいしょう)立像」、「執金剛神(しゅこんごうしん)立像」(いずれも重文)です。

「深沙大将立像(和歌山・金剛峯寺)」「執金剛神立像(和歌山・金剛峯寺)」の展示室の風景
深沙大将像は水の守り神で、玄奘三蔵(いわゆる三蔵法師)が中国から天竺(インド)に向かう途中で、前世6回分は道を阻んだけど、最終的に7回目のトライでその道を通して道中の守護神ともなったという仏教の神様。沙悟浄のモデルです。
やりすぎなくらい玄奘三蔵の根性を試した神様ですね。
膝に象、ヘソに童子、腕に蛇。
首に巻いてる6つの髑髏は、玄奘三蔵の過去6世分の頭蓋だと言います。こわ。
※展覧会ではこの髑髏の目の色をよく見てみてください!!すごいことが起きていた!!
鎌倉時代の名仏師快慶によって、ムッキムキに、ゴッツゴツに、表されています。
迫り来る迫力に、東博の展示室を歩きながら、
私は順路をまっすぐ歩けるのか??
ここで阻まれて、あと6回トライしないと次の展示室まで歩いて行けないのでは??
と妄想。
執金剛神像はお釈迦さまのボディガードのような神様で、硬いものを砕く金剛杵を手に持っています。
今は仏教のさまざまな仏さま、教え、仏教を信じる守る人々を守る力強い神様です。お寺の山門にいる阿形・吽形の金剛力士像(仁王像)です。
執金剛神という概念が2つの姿に分かれて、金剛力士になったとされています。
同じく怖くてムキムキです。
ボディビルダーのようなパンプアップされた体に、お肌がパーンと張っているところまで感じられます。
有名な東大寺の執金剛神像は鎧を着ているのですが、高野山霊宝館の快慶作のこちらは上裸です。
快慶は鎌倉時代に高野山で活動した図像収集家・玄証に関わる白描図像を参考にしたんだとか。
そして強めにご紹介したいのが、この2尊の
【背筋】が拝めること。

「深沙大将立像(和歌山・金剛峯寺)」「執金剛神立像(和歌山・金剛峯寺)」の展示室の風景
360°ガラスケースなしで拝めるのです。
必拝です
そもそも高野山まで行かないと拝めないお二方が 東京にお出ましいただいているだけでありがたいのに。
いつも、高野山霊宝館では壁に背中を向けて立っているので、背後は拝めないんです。
お二方は快慶が造ったんですよ。
背中まで抜かりなく彫っているに違いないんですよ。
いざその背中は・・・
肉厚な肩甲骨。
お肌トゥルトゥル。
ああ・・・優しい。
前面はめっちゃ怖い顔して筋肉隆々の怖いお姿なのに、
背中は優しいのかい。
滑らかなお肌なのかい。
『背中の頼りがい』
を感じました。
ちなみに、深沙大将像の胎内に納められていた「宝篋印陀羅尼(重文)」という呪文のようなありがたいお経も特別公開。
中のものまで拝めるのです。
その奥にある、巨大な五大力菩薩像 豊前五郎為広筆(鎌倉時代 建久8年(1197) 和歌山・普賢院 重文)は高さ約3.7mで見上げるほどの迫力に驚きます!
第二章では、京都の教王護国寺[東寺]で毎年正月に行われる真言密教の最高峰の儀式「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」が紹介されています。
ここで見逃せないのが、「二間観音(ふたまかんのん)」と呼ばれる聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像(鎌倉時代13世紀 京都・教王護国寺[東寺] 重文)
かなり珍しい組み合わせのメンバーです。

重文:聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像(二間観音)(鎌倉時代 13世紀 京都・教王護国寺[東寺] )
後七日御修法(ごしちにちみしほ)とは
平安時代より、新年に宮中で行われた祈りの行事のうちの1つです。
1月1日より宮中では14日間の祈りの行事が行われるのですが
前半7日間は神道の儀式。
後半7日間は仏教の儀式。
ということで、「後七日御修法」。
明治時代に神仏分離がなされると、「後七日御修法」は教王護国寺[東寺]で行われるようになりました。
そもそも教王護国寺[東寺]は、平安京を守るために、ひいてはこの国の全てを守るために、醍醐天皇より空海が任されたお寺ですからね。
そして注目の
「二間観音」(ふたまかんのん)
正式には聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像、奇跡的な美しさでした。
光背(仏様の後ろの飾り)が風でパリッと割れてしまいそうなほど薄く、 極限まで細かく透かし彫りされています。 お衣の繊細な「截金(きりかね)紋様」も、時代を経た今なお眩い輝きを放っています。
普段は厨子(ずし)に閉じられた秘仏なので、色彩が信じられないほど綺麗に残っているのです。

教王護国寺[東寺]での「二間観音」が納められた厨子の様子(写真パネル)
展示室では、実際の儀式の写真や映像も紹介されているのですが、その様子を見ると、厨子の扉が開くのは「ほんの細い隙間」だけ。
しかも暗闇に蝋燭の灯りのみで、手前には装飾のリボン結びがあるため、中の中まで見えません。
「これは目で見て楽しむものではない、
心の中でイメージして拝むものなのだ」
そう突きつけられるような厳かさです。
そんな秘仏を、この展覧会ではなんと360度じっくり拝むことができます。ありがたすぎて涙が出ます。
二間観音は、後七日御修法の中で観音供(かんのんぐ)というパートで本尊として祈られます。後七日御修法が宮中行事だった際、清涼殿の“二間”にて観音供が行われたので、二間観音と呼ばれます。
もちろん門外不出の超重要な修法なので、一般人が参列できるわけなく見たのも知ったのも初めてです。
真言宗のお坊さんでも見て拝んだことない人がほとんどだと思います。
貴重な二間観音を360°ご堪能ください。
第3章は「真言各宗派の名宝」、第4章「真言各宗派の彫刻と秘仏」と続きます。

第4章「真言各宗派の彫刻と秘仏」展示室の風景
ここは仏像ファンなら気絶するレベルの特大ボリューム。
「ハリウッドスターが東京ビッグサイトに全員集まって握手会をしてくれている」ような状態です。
第3章は「真言各宗派の名宝」では 貴重な経典やら絵巻物やら、密教法具、曼荼羅、掛け軸も見逃せません。
一文字ごとに仏様が描かれた「一字一仏法華経序品(平安時代 11世紀 香川・善通寺 国宝)」は信じがたい執念とキュートな仏様の絵に感動するのでぜひ。

国宝:一字一仏法華経序品(平安時代 11世紀 香川・善通寺)
第4章「真言各宗派の彫刻と秘仏」では、 もう私たち仏像ファンはハンカチを用意して、汗と涎と涙を拭きながら進みましょう。
小ぶりで体がぎゅっとまとまった姿が可愛いのが第一印象。
そして品が良い。
着ているものがおしゃれだし
口髭がなが〜くムッシュな感じ。
どこぞの国の高貴な武人だという感じ。

重文:毘沙門天立像(平安時代 12世紀 京都・乙訓寺)
密教の静かな色気がムンムンに出ています。

重文:弥勒如来坐像(伝宝生如来)(平安時代 9世紀 大阪・観心寺)
足が長くてスタイリッシュ。
霊的な力がものすごく強そうな木がそこに立っているかのようなオーラです。

重文:吉祥天立像(平安時代 12世紀 香川・善通寺)
こんな感じでまだまだ語りたい仏像が多いですが、なんといっても真言宗の秘仏が一斉にご開帳されているゾーンもあるのです!!
明治時代に苦労して秘仏を調査したフェノロサや岡倉天心が見たら「えっ、こんなに一気に開けちゃっていいの!?」と腰を抜かすに違いありません。
そんな贅沢な展示から、私の推し仏を3尊に絞ってご紹介します。

重文:如意輪観音菩薩坐像(平安時代 11世紀 大阪・大門寺 )
台座から頭のてっぺんまで1つの木で彫り出すという!
色を塗らずに木の素地だけで勝負するかっこよさ
気だるいポージングで、唯一無二のオーラを放っていました。
こんなにかっこいいと思えた如意輪観音様は初めて。
この方に出会えただけで、今日来てよかったと思えました。
(そんな感想ばっかり連続する展覧会なんですがね)
33年に一度のご開帳の十一面観音様。
この怖さたるや。
the密教。
珍しく腕が6本ある十一面観音様。
経典に根拠を持たない超珍しいケースではあるものの、中国とかに類例はあるみたい。
めちゃくちゃ顔が大きい。
肩がゴツい。

重文:十一面観音菩薩立像 (平安時代 9〜10世紀 三重・観菩提寺)
足元はシンプルで小さくて、このアンバランスさがまた彼女の呪力を増しているように思えて仕方ないです。
平安時代に、本当にこれくらい異形の観音像が出現したのだろうと妄想は止まりません。
頭部は大きい仏像は下から拝む人にとって綺麗な形に見える〜というよく言われる話がありますが、観菩提寺さんの十一面観音像については、そういう計算があったというのを感じないんですよね。
主観です。コラムなんだから主観を書かせていただくぞ!えい!
こういう風に顔が怖い仏像といえば、京都・神護寺の薬師如来立像が筆頭にきます。それといい勝負の怖さですよ。
言わずと知れた
日本最小の国宝
仏師 円勢・長円により造られた
お薬師様単体で約11cm、台座と光背を合わせても25cmほどの
最高級のビャクダンの木を使用した仏像。

国宝:薬師如来坐像 円勢・長円作(平安時代 康和5年(1103) 京都・仁和寺)
丸い光背には七尊の仏、両脇にはナースのように控える日光・月光菩薩、 台座には細密に彫られた十二神将。
ぎゅ〜〜っと濃密に「薬師如来オールスターズ」が描かれているんです。
顕微鏡で覗きたくなるほどの技巧がこの小さな体にギュッと凝縮されています。
単眼鏡をお持ちの方は必携です!
和宮様のために削られた蘭奢待とかね・・・他にもとんでもないものが多いです。
この秘仏ゾーンが最後に待ち受けていることを加味して、
前半の展示室で体力を使い切らないようにしてくださいね!
さぁ、最後のお部屋はなんと撮影可能のエリア!
そこには、
京都・安祥寺 五智如来坐像 5軀 (平安時代 9世紀 国宝)
山梨・放光寺 天弓愛染明王坐像 (平安時代 12世紀 重要文化財)
が鎮座しておられます。
もう曼荼羅からそのままムクリと起き上がってきたかのよう。
顔がみんな似ていて、それぞれ赤ちゃんのように無垢です。

国宝:五智如来坐像(平安時代 9世紀 京都・安祥寺)
後ろから見た背中も、横顔も、髪型も、クリンっとボリュームがあって丸い。
ある密教僧がおっしゃていたのですが「仏像に骨格はないのだよ」と。
生き物じゃない。
大日如来のお働きを役割ごとに擬人化して見えるようにしたような存在が、あらゆる密教の仏像です。
安祥寺の五智如来様もまさにそうで。
背中の丸みや、赤ん坊のように無垢なお顔に、密教の熱いエネルギーを感じ最高でした。
すでにSNSでも反響を呼んでいて、数多くのファンを生み出している天弓愛染明王像。
「愛」という強いエネルギーを、煩悩を打ち砕く力へ方向転換させる仏様。平安時代より1000年以上、天に向かって弓を引く鋭い目線がに釘付け!
お寺では絶対に見られない横のアングルからも拝めます。

重文:愛染明王坐像(平安時代 12世紀 山梨・放光寺)
お写真を撮る際は、まずはカメラを置いて、ご自身の目でしっかりその尊さを拝んでから、お土産程度にシャッターを切らせていただきましょうね。

重文:愛染明王坐像(平安時代 12世紀 山梨・放光寺)
最後に・・・
秘仏とは、普段閉ざされた扉の向こうにいらっしゃる姿を、心の中でイメージして拝むもの。 でも現代の私たちはその「想像力」が少し欠けてしまっているかもしれません。
だからこそ、今回こうして贅沢に見せていただいたお姿をしっかりと脳内に焼き付けましょう。
次はぜひ、扉が閉じられた静かなお寺を訪れ、「あの奥にいらっしゃるんだな」と心の中で仏様と対話してみてください。
私は、マシュロバさんが可愛くイラストにした京都・安祥寺の五智如来坐像の6連アクリルチャームをゲット!

「シブくてカワイイ」仏像グッズのブランド・「マシュロバ」デザイン「国宝《五智如来坐像》(京都・安祥寺蔵)・6連アクリルチャーム」
東京国立博物館 平成館の弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」9月6日まで・毎週月曜休館(ただし8月31日(月)は特別開館)
ぜひみなさま展覧会に足を運んでくださいね。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
南無〜
▷▷次回もお楽しみに!次回掲載は10月予定です。

みほとけ
元アイドル・元ミス鎌倉。2018年より仏像好き芸人として活動。年間500以上の寺院を巡り、拝観した仏像は1万体超。テレビ出演や講演などを通じて、仏像とお寺の魅力を発信している。