2025.12.17
新しい年が近づくにつれ、古都・奈良の春日野に位置する春日大社は、朱色の鮮やかな社殿と静寂な森が対照的な、荘厳な空気に包まれます。
奈良時代に国の守護のために創建されて以来、1200年以上にわたって幅広く篤い信仰を集めてきた全国の春日神社の総本社です。
本殿を取り囲む約3,000基もの燈籠が灯されると現れる幻想的な「万燈籠」、そして「神の使い」とされる鹿、境内全体を包み込む自然との共生は、春日大社を訪れる最大の魅力です。
初詣にぴったりの世界遺産である「古都奈良の文化財」を、隅々までご紹介していきます。

春日大社の起源は、奈良時代に都が平城京に移された直後の神護景雲(じんごけいうん)2年(768年)とされています。
藤原氏の氏神であった武甕槌命(たけみかづちのみこと)が、常陸国(現在の茨城県鹿島神宮)から白い鹿に乗って御蓋山(みかさやま)の頂に降り立ったのが始まりと伝えられています。その後、都の鎮護のため現在の地に社殿が造営されました。
鹿が「神の使い(神鹿)」として大切にされているのは、この創建時の神話に由来しています。
藤原氏が摂関政治を通じて日本の権力を掌握するにつれて、彼らの氏神である春日大社もまた、単なる一族の守護神から、日本全体を守る国家鎮護の神へと地位を高めていきました。
毎年3月13日に行われる「春日祭」は、京都の葵祭、石清水祭と並ぶ日本三大勅祭の一つで、現在も宮中から天皇の代理である勅使が参向し、国家安泰を祈願します。
また、皇族や藤原氏などの貴族が奉納した宝物は、その点数と質の高さから春日大社は「平安の正倉院」とも称され、現在約3,000点の御神宝が境内にある「国宝殿」に収蔵されています。
春日大社は、「式年造替(しきねんぞうたい)」という儀式を20年ごとに行います。これは、伊勢神宮の「式年遷宮(しきねんせんぐう)」とは異なり、同じ場所に本殿を立て直すことに特徴があります。修復中は、御神体を仮の御殿に移してお祀りし、再び修復された本殿にお迎えします。
この儀式のおかげで、奈良時代創建当初の古代の技術と様式が1200年以上にわたり忠実に守り伝えられ、鮮やかな朱色の社殿が保たれています。
20年に一度これだけの事業を行えたのは、藤原氏の圧倒的な財力と職人集団の為せる業でもありました。だからこそ「国宝殿」に格納される宝物群は膨大かつ質の高いものになっているのでしょう。

春日大社のご本殿は第一殿から第四殿まで四棟が並び、それぞれに四柱(しちちゅう)の神様が祀られています。
「勝負運・厄除け」= 武甕槌命(たけみかづちのみこと)・経津主命(ふつぬしのみこと)
・・・特に受験や仕事の成功を願う方に
「学問・開運」=天児屋根命(あめのこやねのみこと)
・・・知恵を授かりたい方に
「縁結び・家内安全」=比売神(ひめがみ)
・・・家族や恋愛の成就を願う方に
広大な境内の主な見どころを順番に紹介していきます。
近鉄奈良駅方面から春日大社へ向かうと、最初に現れるのが一之鳥居です。高さは6.75mで日本三大木造鳥居のひとつに数えられています。今では市街地の三条通との境界に当たりますが、古くは春日大社と興福寺旧境内との境に立つ「結界」としての役割を持っていました。
ここから続く参道は、約1kmにわたって春日山の森の中に伸びています。能の舞台の鏡台に鏡板に描かれている松の絵のルーツとされている「影向の松(ようごうのまつ)」や、競馬や流鏑馬の始点となる「馬出橋(まだしのはし)」も必見です。
この参道の全体の特徴は、神使である鹿が自由に歩き回っていること。そして両脇には数多くの石燈籠が並び、神秘的な雰囲気を醸し出しています。

参道の奥に立つ二之鳥居をくぐると、朱塗りの鮮やかな南門(なんもん)が見えてきます。このあたりからさらに、神聖な空気が増してきます。
鹿の手水所で手水をし、祓戸神社(はらえどじんじゃ)へお参りし、身を清めてからお進みください。
その先に見える南門は、本殿を取り囲む回廊への入り口の一つで、高さ12mの春日大社最大の楼門です。

南門から入ると、その先の正面に現れるのが、最も重要かつ壮麗な中門(ちゅうもん)です。高さは約10m。本殿を守るように周囲を取り囲む御廊(おろう・回廊)の中央にあり、国の重要文化財に指定されています。
御廊は朱塗りの柱と白壁が美しい回廊で、中門から左右に約13m、鳥が翼を広げたように延び、約1000基の釣り燈籠が吊るされています。
中門の奥には、いよいよ四つの社殿が並ぶ本殿が鎮座します。この本殿は、独特の建築様式である「春日造(かすがづくり)」を代表するもので、建築技術のひとつである切妻・妻入(きりづま・つまいり)で正面に庇(ひさし)を付け、屋根は檜皮葺(ひわだぶき)で優美な曲線を描く形式です。
春日大社では、20年ごとに本殿を新しく建てる式年造替が行われ、社殿だけでなく装束や祭具も新調されます。これは日本の伝統的な技術と文化を継承する重要な神事です。基本的な参拝はこの中門までとなっています。
本殿から南に進むと、御蓋山の麓にお社が点在し様々な神様が祀られています。その中の「春日若宮」は、春日大社の摂社の中でも特に重要な存在で、古くから参詣に訪れた多くの人が神めぐりをした場所だと言われています。
この周辺を巡る若宮十五社めぐりは、それぞれの社を周りながら玉串札を納め、良縁や開運・財運、商売繁盛、延命長寿などのご利益を祈願していきます。
この十五社の一つで、若宮十五社巡りの受付と満願奉告をする場所「夫婦大國社(めおとだいこくしゃ)」はご夫婦の大国様をお祀りする神社で、夫婦円満・家内安全・縁結びを願う人がたくさん訪れています。
また、毎年12月17日に開催される「春日若宮おん祭」は、平安時代から900年続くお祭りで、日本の伝統芸能の生きた文化財とも言われ、奈良に冬の訪れを告げる風物詩となっています。
春日大社の境内には本殿以外にも、62もの小さな社(摂社・末社)が点在しています。
水谷川の清き川辺に鎮まる開運招福に、霊験高い九社のお社を巡拝する「開運招福水谷九社めぐり」。
今も龍神の霊力の湧き出す境内各所を回り、人生へ幸運を招く御力を授かっていく「春日五大龍神めぐり」など。
時間をかけて巡ることで、様々なご利益を授かることができます。
社殿を囲む回廊や参道に並ぶ石燈籠・釣り燈籠の総数は、なんと約3,000基にも及びます。これは、平安時代以降、貴族や武士、庶民から奉納され続けたもので、日本の燈籠文化の歴史を今に伝える貴重な遺産となっています。
春日大社は、その社殿の美しさだけでなく、自然との共存という点でも特異な存在です。

春日大社の背後に広がる春日山原始林は、神の山として古来より狩猟や伐採が禁じられてきたため、ほとんど手つかずの状態で残されています。天然記念物および世界遺産に登録されており、社殿と一体となった神秘的な景観を形作っています。中には『万葉集』に詠まれている約300種の植物を栽培している萬葉植物園もあり、四季折々の可憐な草花を楽しむことができます。

奈良のシンボルである鹿は、前述の通り、武甕槌命が鹿島から白鹿に乗って来たという伝説に由来し、神の使い(神使)として大切にされています。彼らが境内や奈良公園で自由に暮らす様子は、春日大社の静謐な雰囲気を一層深めています。
その音色で鹿を呼び寄せる奈良の風物詩である「鹿寄せ」や、鹿をモチーフにした授与品・おみくじも用意されています。

社殿を囲む回廊や参道に並ぶ石燈籠・釣り燈籠の総数は、なんと約3,000基にも及びます。これは、平安時代以降、貴族や武士、庶民から奉納され続けたもので、日本の燈籠文化の歴史を今に伝える貴重な遺産となっています。
現在では、年に二度(節分と8月)、万燈籠として浄火が灯されます。浄火を献じて神様に様々な祈願をすることが万燈籠の起源です。灯された火により、朱塗りの社殿は浄闇に浮かび、幻想的な雰囲気を体感することができます。
春日大社は、藤原氏という巨大な一族の歴史とともに、日本の政治と文化の中心として歩み、平安貴族文化を今に伝える。
四柱の神々から、家運隆昌から縁結びまで多岐にわたるご利益を授かることができる貴重な社です。
世界遺産の原始林と、千を超える燈籠、神使の鹿が織りなす幻想的な空間。ただ何も知らずに歩いても感じられる何かを持つ場所だと言えます。
奈良に行く際はもちろん、何かに迷った時にふらっと訪れるのもいいかもしれませんね。

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