真言宗各派の秘仏が東京に集結!東京国立博物館で開催 弘法大師生誕1250年 特別展「空海と真言の名宝」報道内覧会レポート

真言宗各派の秘仏が東京に集結!東京国立博物館で開催 弘法大師生誕1250年 特別展「空海と真言の名宝」報道内覧会レポート

2026.07.24

弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」に行ってきた。

2026年7月14日(火)から東京国立博物館 平成館にて、弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」が開幕しました。

真言宗の宗祖・弘法大師空海の生誕1250年を記念し、真言宗各派総大本山会(真言宗の十八本山で構成された会)が加盟寺院の総力を挙げて名宝を持ち寄る、まさに一生に一度クラスの展覧会です。

国宝15件、重要文化財60件を含む88件の名宝が一堂に会しますが、中でも9件11体の秘仏が特別公開という見逃せない内容になっています。

巡縁では一足先に、7月13日(月)に開催された報道内覧会に参加してきました。展覧会の見どころと空海・真言密教にまつわる基礎知識をご紹介します。ぜひ、特別展に行く前の予習としてお役立てください!

 

この記事でわかること

・弘法大師・空海とはどんな人物だったのか

・特別展「空海と真言の名宝」の見どころ

・今回だけ公開される秘仏や名宝の魅力

・展覧会をより楽しむための予備知識

 

 

弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」 東京国立博物館 2026年 展示風景

弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」 東京国立博物館 2026年 展示風景

 

弘法大師・空海とは

空海は平安時代に活躍した、真言宗の宗祖。

 

遣唐使として唐に渡り、密教の正統な教えを受け継いで日本に伝えました。帰国後には高野山を開き、教王護国寺[東寺]を拠点に真言密教を広めました。「弘法大師」は、没後に贈られた諡号です。

 

讃岐に生まれ、山野で修行を積む

空海は774年、讃岐国(現在の香川県)の地方豪族の家に生まれました。

 

幼名は真魚。都に出て大学に進みますが、やがて官吏の道を離れ、自然の中に身を投じるようになります。

四国の山岳や海辺の洞窟で修行を重ねたと伝えられ、室戸岬の洞窟では明星が口に飛び込む神秘体験をしたという逸話も。

「空」と「海」しか見えなかったその洞窟での体験が、後の名の由来になったとも言われています。

 

唐への留学と、密教との出会い

804年、空海は遣唐使の一員として唐に渡ります。

 

この時、同じ船団には後に天台宗を開く最澄も乗っていましたが、最澄が国費の留学生だったのに対し、空海は無名の私費留学生という、立場がまったく異なるものでした。

ところが唐の都・長安に入った空海は、密教の正統な継承者であった青龍寺の恵果和尚のもとを訪ね、わずか数か月のうちに密教の奥義のすべてを伝授されました。

 

恵果は空海に「あなたが来るのを待っていた」と語り、胎蔵界・金剛界の両部の灌頂を授けたそうです。恵果はその年のうちに入寂しており、空海は正統な密教の教えを受け継ぐ最後の弟子となりました。

 

高野山と東寺、2つの寺院

806年に帰国した空海は、嵯峨天皇の信任を得て活躍の場を広げていきます。

 

817年には修禅の道場として高野山の開創に着手。823年には教王護国寺[東寺]を賜り、真言密教の根本道場として整備しました。高野山と東寺は、今も真言宗の二大聖地として多くの参拝者を集めています。

空海の功績は宗教活動だけにとどまりません。庶民のための教育機関「綜藝種智院」を開設したり、讃岐の満濃池の改修工事を指揮したりと、土木・教育の分野でも大きな足跡を残しました。

 

「いろは歌」の作者と伝えられたり、日本におけるかな文字の普及に関わったという伝承が空海と結びつけられてきたことも、空海が単なる宗教者ではなく、当代随一の知識人・技術者でもあったことを物語っています。

 

「入定」した空海は、今も衆生を導き続けている

835年、空海は高野山奥之院にて入定しました。

 

真言密教の考え方では、これは「死」ではなく、弥勒菩薩がこの世に下生するまでの間、瞑想を続けながら衆生を救い続けている状態とされています。

今でも高野山奥之院では、毎日欠かさず空海に食事を届ける「生身供」という儀式が続けられており、空海は今なお生きている存在として祀られています。

 

十八本山と、今に続く秘儀「後七日御修法ごしちにちみしほ

空海の教えは長い歴史のなかでさまざまに分派しましたが、その中心的な役割を果たしてきたのが、宮中で行われる新年の秘儀・後七日御修法ごしちにちみしほ(後述します)を支える十八本山です。

空海の事績だけでなく、こうして現代まで生き続ける信仰の広がりまでを体感できるのも、この展覧会の大きな魅力です。

 

東京国立博物館の特別展!一生に一度クラスの見どころは?

会場は「空海ゆかりの名宝」「密教美術の精華」「密教図像の世界」「後七日御修法の世界」「真言宗各派の名宝」「真言宗各派の彫刻と秘仏」という章立てで構成されており、空海個人の足跡から真言密教の美術世界、そして現代まで続く宮中儀礼の世界までを一望できる内容になっています。

 

国宝・重文が目白押し!

会場には、教科書でもおなじみの奈良・朝護孫子寺蔵の国宝「信貴山縁起絵巻」をはじめ、奈良・西大寺蔵の国宝「十二天像」、京都・教王護国寺[東寺]蔵の重要文化財「聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像(二間観音)」など、名だたる名品が並びます。

第1章空海と真言密教の展示の様子

第1章展示室|弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」 東京国立博物館 2026年 展示風景

 

弘法大師坐像

展示会場に入って真っ先にお出迎えしてくださるのが、金剛峯寺の本坊に安置されている、弘法大師坐像です。

 

教科書などでもおなじみの、誰もが思い浮かべるお姿の像。普段は秘仏であり、今回も写真撮影はNG。バックには、金色の月が配されていて、これは御厨子の中にある阿字観をイメージしたものだそう。

 

普段はなかなかお会いできない出会い、ありがたく鑑賞させていただきました。

 

弘法大師直筆の書に感動

入ってしばらく進むと、三十帖冊子という小さな冊子が出てきました。

 

とても小さな文字がびっしり並んでいたのですが、何とこれ、空海や、彼と共に学んだ写経生たちの直筆によるものとのこと!

 

空海たちが恵果から受けた密教典籍を書き写したそうで、まさに「ここから始まった」とも言える、大変貴重なものです。小さなノートの中にびっしりと書かれた書の美しさも含めて、とても見ごたえがありました。ぜひお見逃しなく!

 

後七日御修法について深く知る

後七日御修法は、国家鎮護を祈る秘儀です。

 

正月8日から14日までの七日間、天皇の御衣を壇上に捧げ、国家の安泰と五穀豊穣、玉体安穏を祈願します。かつては宮中で営まれる最重要の年中行事のひとつでしたが、現在は教王護国寺[東寺]で行われています。

今回の特別展では、一般人はなかなか目にすることができないこの行事についても、深く知ることができます。

 

二間観音はどの角度から見ても美しい

後七日御修法をテーマにした展示会場で必見なのが、聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像(二間観音)です。

 

この呼称は、この像がかつて内裏の仁寿殿で行われ、のちに清涼殿二間で行われた観音供の本尊として用いられたことに由来します。

 

清涼殿などの天皇のプライベート空間に近い場所に安置されていたということは、天皇が最も身近に置いて拝んでいた念持仏であることを表しています。

 

南北朝時代には、後醍醐天皇が京都から吉野へ移る際に、この像を内裏から持ち出されたそう。その後、後小松天皇によって東寺へ預けられ、以来東寺の秘仏として祀られるようになりました。

真ん中に聖観音菩薩、左右に梵天と帝釈天像がいますが、この3体がセットになっているのは非常にめずらしいとのこと。

 

内裏の火災などによって何度か焼失しており、今回見られた像は鎌倉時代に造られたものと考えられているそうです。

普段は御厨子の中に安置されていますが、今回は御厨子から出された姿で鑑賞できます。

 

この像が本当に美しい!白檀で作られていて、衣は金箔を細かく切って模様のように貼り付けられています。

 

金属の透かし彫りや彩色文様の美しい台座など、当時の一流の技術者たちの粋を集めた作品は、どの角度から見てもすばらしいの一言。

 

そして、どの角度からも見られるというのが、非常に貴重な機会。二度と目にできないかも、と、何度も拝見してしまいました。

弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」 東京国立博物館 2026年 展示風景

重要文化財「聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像(二間観音)」 京都・教王護国寺[東寺]蔵 |内覧会にて撮影

 

普段は見られない秘仏9件11体が集結!特別公開の仏像たち

今回の特別展は、普段は目にすることのできない秘仏の数々も大きな見どころです。

和歌山・金剛峯寺蔵の「弘法大師坐像」をはじめ、三重・観菩提寺蔵の重要文化財「十一面観音菩薩立像」、大阪・大門寺蔵の重要文化財「如意輪観音菩薩坐像」といった、各地の秘仏11体が特別に公開されています。

 

アンバランスさに夢中になる、十一面観音菩薩立像

今回の秘仏の中でも目玉と言えるのが、三重県にある観菩提寺蔵の「十一面観音菩薩立像」。

 

随筆家の白洲正子さんが、「仏像というより神像に近い」と絶賛したことで有名になったのですが、普段は33年に一度しか御開帳しないという、大変貴重な仏像です。

通常の十一面観音像は腕が2本ですが、この像は6本(六臂)もあります。何よりの特徴は、そのアンバランスな姿。

 

頭が大きく、足は大変華奢。どこか不機嫌そうな、何とも言えない表情をされています。高さ約2mのこの像は、左手に持った水差しも含めて1本の木から彫り出されたもの。写真だけでは伝わらない、何とも言えない魅力を感じる仏像でした。

三重県にある観菩提寺蔵の「十一面観音菩薩立像」

三重県・観菩提寺蔵の重要文化財「十一面観音菩薩立像」|内覧会にて撮影

 

関西弁をしゃべりそうな如意輪観音像

個人的に好きな仏様と言えば、「如意輪観音」を挙げる私ですが、こちらの如意輪観音像は、一味違った雰囲気。

 

大阪・大門寺蔵だからというわけではないですが、なぜか関西弁をしゃべりそう…と感じてしまいました。

 

蓮華座ではなく岩座の上に座っていらっしゃるからでしょうか、「重鎮」という言葉がしっくりくる仏様です。

 

こちらも33年に一度しか公開されないとのこと。この先、目にする機会がないかもしれない、とても貴重な仏様です。

大阪・大門寺蔵の重要文化財「如意輪観音菩薩坐像」

大阪・大門寺蔵の重要文化財「如意輪観音菩薩坐像」|内覧会にて撮影

 

和宮の仏様が、小さくてかわいかった

最後にご紹介するのは、会場の最後付近に安置された、厨子入十一面観音。

 

とても小さな御厨子と像ですが、何とこちらは、皇女和宮の念持仏とのこと。徳川家に降嫁した時にも持参していたかも、という大変貴重な仏様。伽羅(高級香木)が使われたと伝わる仏様は、とてもかわいらしいお顔をされています。

 

また、一緒に展示されている「蘭奢待」は、正倉院の宝物である香木の蘭奢待の一部と伝わるもの。明治天皇が奈良に行幸した際、蘭奢待を持ち帰ったという記録が残っており、当時脚気を患っていた叔母の和宮に送ったのではないかと言われているそう。

どちらもとても貴重なものなので、ぜひチェックしてみてください。

弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」 東京国立博物館 2026年 展示風景

右:「厨子入十一面観音菩薩立像」 左:香木片銘「蘭奢待」 いずれも京都・泉涌寺蔵|内覧会にて撮影

 

まとめ

特別展「空海と真言の名宝」、十八本山が総力を挙げて企画されたというだけあって、「見ごたえがある」などという言葉だけでは表しきれないほど、すばらしいと特別展でした。

これだけの規模で一般公開されることは今後もなかなかないはず。真言宗や空海に興味があるという方や日本の仏教美術、密教図像、秘仏に少しでも心惹かれる方はもちろんですが、普段仏教にあまりなじみがないという方も、ぜひ会期中に足を運んでみてください。

 

たくさんの人々が1200年もの間守り続けてきた歴史を感じられる、忘れられない夏の思い出になるはずです。

開催概要

展覧会名
弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」
会期
2026年7月14日(火)〜9月6日(日)
※一部作品の展示替えがあります。

会場
東京国立博物館 平成館
東京都台東区上野公園13-9
開館時間
9:30〜17:00
毎週金・土曜日および7月19日(日)は20:00まで
※入館は閉館の30分前まで。
休館日
月曜日、7月21日(火)
※7月20日(月・祝)、8月31日(月)は開館します。

観覧料金
一般:2,300円
大学生:1,300円
高校生:900円
アクセス
JR上野駅 公園口より徒歩約10分
JR鶯谷駅 南口より徒歩約10分
主催
東京国立博物館、真言宗各派総大本山会、読売新聞社、NHK、NHKプロモーション

 

筆者プロフィール

Ryo
PROFILE

Ryo

フリーライター

趣味は寺社仏閣と国内旅行。旅行手配の手際のよさから、周囲の旅行プランナー役を担うことも。Bリーグ観戦、全国のスターバックス巡りも欠かせない。日本仏教検定1級。

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