2026.06.12
先日、福生社長が、吉野にある大峯山で、1泊2日の山岳修行を体験してきました。
折しも奈良国立博物館で開催中の特別展「神仏の山 吉野・大峯 ―蔵王権現に捧げた祈りと美―」が大盛況で開催されていた、まさに絶好のタイミングでした。きっと、山伏の修行がどんなものなのか知りたい方も多いはず。
ということで、今回はすばらしい写真と共に、福生社長の山伏修行体験記を公開します。
私はこの景色を、一生忘れないだろう。
大峯山寺近くにある「お花畑」と呼ばれる笹の平原で、私はそう思った。
夕刻、その場所に立ったとき、四方を大峰の山々に囲まれ一面の笹原が夕日に染まっていた。雲がすぐそこにあって、驚くほど速く流れていく。
古の人がここを極楽浄土のようだと言ったのが、すんなりと腑に落ちる。下界と完全に切り離された世界だった。
ずっと眺めていたい、そう思った。

大峯山山頂 「お花畑」
5月下旬。
吉野の大峯山へ、1泊2日の山伏修行に参加してきた。会社のある大阪・堺市から、天川村・洞川の奥地へ向かう。先達に導かれ、同行の仲間たちと連れ立っての山上詣りだ。
登山ルートは五番関トンネルから。山上ヶ岳までの奥駈道を進む、まさに修験道の入門編だ。
ちょうど雨上がりの翌日だったこともあり、足元は重い。水分をたっぷり含んだ落ち葉の積層を踏みしめながら、険しい林道を登っていった。
やがて目に飛び込んで来たのが「女人結界門」。文字通り、女性はここから先には進めない。門をくぐった瞬間、空気が変わった気がした。ここからが本当の聖地なのだと、肌で感じられた。

大峯山寺 入り口
奥駈の道はなかなか厳しい。
獣道のような斜面やロープ場、鎖場もある。すぐ脇が絶壁という細い岩場、ツルツルに磨かれた石段、翌日の筋肉痛を確信させる木の階段など……
30年ぶりの山登りだった私だが、進んでいると不思議と「ああ、こうやって登るんだった」と、足から記憶が蘇ってきた。
それは子どもの頃に、父に連れられて信州の山々を歩いた記憶だった。父への感謝が、ふと胸をよぎった。

苦しいだけではない。先達が吹き鳴らすほら貝の音が山に響き渡り、一行が声をそろえる「懺悔懺悔、六根清浄」のかけ念仏が谷へと落ちていく。
懺悔懺悔、六根清浄……
懺悔懺悔、六根清浄……
前を行く仲間の背中を追いながら歩くうちに、「この隔絶した場所にいても、自分は一人じゃない」という感覚が静かに満ちてきた。
休憩でふと立ち止まれば、稜線の果てまで連なる山々と、そこから届く風。
ここでも私は生きている、と思わせてくれる。そういう風だった。

山上での修行の中でも、大峯山寺の勤行は格別だった。
お堂の中は暗く、灯りはほとんど蝋燭のみ。神秘的な空間だった。
そして、御開帳で拝させていただいた役行者様の像の目力の強さ。
何という迫力だろう。下界の寺とはまるで違う、霊気のようなものをひしひしと感じた。ここでの体験も、生涯忘れられないだろう。

大峯山寺
そして、「西の覗き」。
崖の縁から吊るされる、大峯山でもっとも有名な、あの修行だ。
ロープ1つで、崖の下に体を乗り出していく。体を支えてくれる、先達を信じることしかできない。怖い、という感覚は確かにあった。
だが、同時に、「また生きなければ」という想いも湧き上がる。

大峯山最大の修行場「西の覗き」吊るされているのは、福生社長。「世の中のために尽くすか!!」等、決意を問われる。
「なるようにしかならない」。不思議と冷静になれた体験だった。
夜は宿坊「東南院」で精進料理をいただいた。
疲れ果てた体には、白米のやさしい甘さが染みる。薄暗く広い食堂でいただく食事は、普段とはまるで違う趣があった。
食後には、先達や仲間たちと盃を交わした。山上までの険しい道を共に乗り越えた仲間たちだからこそわかりあえるものがある、格別の時間だった。
ふと思い立ち、酔いを醒まそうと外へ出た。周囲は真っ暗で、見上げれば満天の星。遠くの山の向こうに、街の灯りがうっすらと滲んでいる。
ああ、ここまで来たんだな、と思った。
⛰️ 修験道豆知識|大峯山寺を支える5つの寺院
実は「東南院」は吉野山だけでなく、山上ケ岳にも宿坊を持っています。
山上ケ岳の大峯山寺は、以下の5つの寺院が輪番で管理しており、行者たちの宿泊や修行を支える重要な役割を担っています。
これらの寺院は大峯山寺近くにも宿坊を構え、行者の憩いの宿であると同時に、厳しい修験道の信仰を守る前線基地としての役割を果たしています。

宿坊「東南院」の精進料理
翌日、堺へ戻ったとき、不思議な感覚があった。
たった1泊2日のはずなのに、まるで1週間ほどの長旅から帰ってきたような気がしたのだ。
自分が自分でなかったような、まったく別の世界へ行っていたような。これが、生まれ変わりというものなのだろうか。
山から持ち帰ったのは、全身の疲労と、脚の筋肉痛。予想通りだ。だが、この疲れや痛みが、「自分が確かに生きている」ということを教えてくれた。
そして心の中には、もう次の思いが芽生えていた。
——また、行ってみたい。

今回社長は、数年に渡り滝行でお世話になっている「金峯山修験本宗 長尾山 信貞寺 」さま主催の「大峯山登拝修行」に参加されました。
修験道の修行というと、どこか特別な人だけのもののように感じるかもしれません。
しかし実際には、初心者でも参加できる体験修行や日帰りプログラムを受け入れている寺院もあります。
日常から少し離れて、自分自身と向き合う時間を持ってみたい方は、ぜひ一度修験道の世界に触れてみてはいかがでしょうか。
⛰️ 修行体験をしてみたい方はこちら
金峯山寺では、修験道の世界にふれられる体験修行を公式ホームページで紹介しています。5月から10月の毎月一回、一般の方を対象に大峯修行体験が開催されており、女性が参加できるコースも設けられています。大峯山での修行に興味のある方は、ぜひご覧ください。
📍 金峯山寺 アクセス情報
〒639-3115
奈良県吉野郡吉野町吉野山
お問い合わせ
TEL:0746-32-8371
電車でのアクセス