2026.07.01
長谷寺についてしっかりと知識をインプットした後で、いよいよ実際に参拝です。
インタビューは本坊でお伺いしていましたが、一度山門の入口まで戻ってきました。

ところで、駅側から長谷寺へ向かう門前の街並みは、タイムスリップしたかのように、レトロでとてもキュート!
特に草餅と三輪そうめんが名物のようで、門前にはいくつも誘惑が…

しかし、今回は長谷寺さまの取材!後ろ髪を引かれながら、スタートです!
赤い橋を渡り、総本山長谷寺と書かれた立派な石柱を越えていくと、仁王門に向かって緩やかな階段が伸びています。途中、「普門院」という小さなお寺があります。
塔頭寺院の一つだそうですが、平安時代に作られたという不動明王坐像が鎮座しています。さらっと安置されていますが、この像、早速重文です…ぜひ見逃さないように立ち寄ってみてださい。
続いて、仁王門へ。
ここが本当の、長谷寺の総門です。

平安時代中期に作られた門ですが、火災によって度々焼失。現在の門は明治時代に作られたものだそう。そして、正面上部に掲げられている「長谷寺」の扁額は、後陽成天皇の御宸筆によるものです。
左右両脇には立派な金剛力士がいて、門を守っています。こちらの門も、国の重要文化財に指定されています。
仁王門をくぐると、目の前にまっすぐ伸びる回廊が現れます。
登廊と呼ばれる石段が、399段。本堂までゆるやかに続いていきます。

天井を見上げると、無数の灯籠がずらり。この丸い形が特徴の吊り灯籠、長谷型灯篭と呼ばれます。年末年始の「観音万燈会(かんのんまんどうえ)」では、登廊と本堂が約数千基の灯籠と灯明の柔らかな光に包まれる幻想的な絶景が楽しめるのだとか!この登廊も、長谷寺を象徴する景色の一つですね。

石段はなだらかで、歩くペースも自然とゆっくりになります。せかさない、せかされない。この日は大勢の参拝者が共に上がっていきましたが、誰しもが両脇の緑を眺めながら、ゆるやかに進んでいきました。
登廊は一度右に折れ、次に左に折れます。
途中、天狗杉や紀貫之古里の梅などが見られるのですが、中でもチェックしていただきたいのが、2つ目の角にある蔵王堂。
実は長谷寺の縁起絵巻の冒頭で、「ここは霊験あらたかな場所だ」とおっしゃったのが、金峯山寺の蔵王権現様だそう。
それにちなんでか、こちらには金峯山寺そっくりの3体の小さな蔵王権現様が祀られています。ちょうど息があがって、一休みしたいころに現れるので、じっくりお参りしてみて下さい。

階段を上がりきり、鐘楼をくぐると、ついに本堂に到着です。現在の本堂は江戸時代に徳川家光によって再建された懸造りの大建築で、観音堂・大悲閣とも呼ばれています。
清水寺と同じように、断崖絶壁に長い柱と貫で固定した懸造りで作られた「舞台」が特徴的で、一部は空中に張り出すように作られています。

その先には礼堂(外陣)と正堂(内陣)が広がり、間には石敷の土間(拝所)があるという、何とも複雑な作り。この建物は、国宝に指定されています。

まずは舞台へ。出た瞬間に、思わず「わあ」と声が出てしまうほどの絶景が広がります。
山の緑と空、眼下に広がる長谷寺の境内。そして、立っているのは清水寺と同じ「舞台」の上。高さは相当なもので少し怖い気もしますが、圧倒的な景色に目が釘付けになり、思わずカメラを向けてしまいます。
一方、背後の本堂。まず真ん中には、青銅色の大香炉が置かれています。獅子がドヤァと立っていてとてもかわいく見える一方、香炉を一生懸命支えているのは健気な邪鬼たち。

ハートに抜かれた猪目模様もとてもステキです。その先には、ちらりと見える観音様。こちらも写真を撮る手が止まりません。
まさに死角なき映えスポットです。
続いて、正堂との間にある礼堂へ。
三方が吹き抜けた空間、よくポスターなどで使われる場所です。端に立って反対側を見ると、板張に周囲の景色が映りこみ、何とも言えない絶景が広がります。
取材に伺ったのは3月上旬でしたが、これからの季節には桜や新緑が映りこみ「床青葉」、秋には「床紅葉」と呼ばれるそうで、こちらでも四季折々の風景が楽しめます。

そんな礼堂と正堂の間には、石畳の拝所があり、ビッグな観音様と対面できます。こちらもとてもステキな空間。せっかくなのでろうそくをお供してから、正面で手を合わせました。
1300年前からたくさんの人が同じように祈ってきたのだと思うと、感慨深いですね。

さて、長谷寺といえば、そんな本尊の巨大な「十一面観音」様です。
高さは約10m、後ろの光背を含めると約12mもあり、これはビルで言うと3〜4階建て相当するそう。
もちろん、日本で最も大きな木造の仏像です。現在お目にかかれるのは室町時代に再興されたものとのことで、国の重要文化財に指定されています。

拝所から見ても迫力満点なのですが、春と秋には特別拝観が開催されていて、何と十一面観音様のすぐ側まで行って足に触れられるというかなり貴重な体験をすることができます。
拝所からの観音様もとてもありがたいのですが、すぐ側でお会いすると、空気感は別格!

さらにちょうどお経の時間とも重なり、あまりにも心地良すぎて、気が付くと30分以上も長居していました。
限られた期間しかできない体験です、ぜひ公開中に足を運んでみてください。
ところで、こちらの観音様は、とても特徴的な姿をしています。
まず、岩の上に立っているということ。そして、錫杖と水瓶を持っている、ということ。
これは、今まさに困っている誰かのもとへ向かっている途中、という姿を現しており、お願い事がより叶いやすいと言われる所以でもあります。「長谷寺式観音」と呼ばれるこのスタイルは、鎌倉の長谷寺をはじめとした各地の長谷観音に受け継がれています。
少し前に、観音様の「裏の顔」というのが話題になったことを御存じでしょうか。
11のお顔のうちの1つに、「暴悪大笑面」という他からは想像できないような憤怒の表情をしているものがあるそうです。この暴悪大笑面は後頭部にあって普段は見ることのできないそうなのですが、人々の起こす悪行に対して、大声を出して笑い飛ばしている表情を表しているとのこと。
チラリとでも見られないかな、と思っていましたが、やはり巨大すぎる観音様、がんばっても見ることは叶いませんでした。・・・というのは、取材時点の話!
2026年6月現在、「暴悪大笑面(ぼうあくだいしょうめん)」の高精細複製が、大講堂(本坊)にて特別公開されています。
この複製は、奈良県立大学の山田修副学長によって制作されたもの。数百枚におよぶ写真撮影と細密な検証を重ねて3Dデータを作成し、そのデータをもとに造形・彩色が行われたのだそう。
通常ではチラリともお目にかかれないお顔です、この機会をお見逃しなく!
本堂参拝を終えて、裏手にある道を進んでいきます。
途中、真言宗のお寺ならではの弘法大師御影堂を参拝し、長谷寺の象徴とも言える五重塔へ。
元々この場所には三重塔が立っていたのですが、明治時代に落雷により焼失。現在の五重塔は昭和29年に戦没被災者慰霊のため、三重塔跡地の北側に建てられたそう。

檜皮葺きの五重宝塔は長谷寺を含め日本にわずか4塔しか現存しておらず、残りの3塔はいずれも国宝や重要文化財に指定されています。
そんな貴重な塔なのですが、現在開山1300年記念した令和の大修復の真っ最中。修繕は令和10年3月31日までの予定とのこと。塔にはしばらくお目にかかれないですね。
ただ、修復に合わせて、修繕への寄付を行えるのもこの期間ならでは。1000円以上の寄付で、何と貴重な屋根の檜皮を使ったお守りをいただけます。

ところで、今回の取材のきっかけとなった「秀長ゆかりの大和三寺巡り」の豊臣秀長ですが、長谷寺には「大旦那」こと豊臣秀長の供養塔が建てられています。
(長谷寺と豊臣秀長の関係についても、前編をご参照ください)
場所は五重塔からさらに進んだ、陀羅尼堂の近く。きっかけがないとなかなか足を踏み入れないエリアだと思うので、ぜひ挑戦してみてください。
なお、この陀羅尼堂は塔頭寺院の一つで、真言宗豊山派を大成した専誉僧正と、新義真言宗の祖である興教大師が祀られています。長谷寺の信仰の源流とも言えるお二人を祀る場所、こちらも忘れずに参拝を。

最後に御守授与所に立ち寄りました。実は今、1300年を記念した限定グッズが頒布されています。
真言宗豊山派の宗紋である「輪違紋」と五重宝塔内部の天井画に描かれた「宝相華」をデザインした『木香炉』、白檀の薫りが優しいオリジナルのお香『開山香』、室町時代の絵師・土佐光茂によって書かれた「長谷寺縁起絵巻」デザインのクリアファイルなど、どれも欲しくなるものばかり。

お土産としてもぴったりなので、ぜひこの機会にGETしてください。
前編でもご紹介したのですが、インタビューの途中であまり知られていないおすすめのスポットとして、「白山権現」という言葉が出てきました。地図を見ていると、弘法大師御影堂の裏手に位置するようです。
そんなすごいスポット、絶対に行ってみなくては!
と思ったのですが、山の中腹に幟こそ見えるものの、探せど探せど、道が見つからず…その後、取材終了のご挨拶に伺った際に白山権現への道を聞いてみたところ、何と「道なき道を行く」、が正解だったそう!
時間も時間だったので、「また次回ね」とおっしゃっていただきました。参拝したい理由がまた一つ増えたようです。
見どころ満載の長谷寺でしたが、やはり事前にその歴史やいわれを知ってから回ってみると、参拝がより楽しくなりました。
これから次々と花が咲き始め、訪れる度に違う景色が楽しめるはずです。何より、長谷寺の起源とも言える銅板法華説相図の公開や、普段は奈良博に展示されている宝物の里帰り、さらには全長50メートルを超える「『本尊御影大画軸」の特別公開など、1300年記念の今しか体験できない行事も目白押し!
訪れる度に違う風景に出会える長谷寺へ、ぜひ足を運んでみてください。
大和國 長谷寺
〒633-0112
奈良県桜井市初瀬731-1
長谷寺は奈良県の山間に位置していますが、公共交通機関・車のどちらでも、比較的スムーズにアクセス可能です。
電車をご利用の場合
近鉄大阪線「長谷寺駅」より徒歩約15分
駅から参道を歩いて15分ほどで到着します。
道中には昔ながらのお土産物店や名物の草餅屋が並んでいて、風情ある街並みが楽しめます。
お車をご利用の場合
・西名阪自動車道「天理IC」より約30分
・名阪国道「針IC」より約20分
※周辺に有料駐車場あり
【写真のご利用について】
本コラムに掲載している写真は、長谷寺様のご許可をいただいて撮影したもの、または長谷寺様よりご提供いただいたものです。
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Dera
「巡縁」では関西方面を担当。寺社仏閣巡りと御朱印集めが趣味。クラフトビールに目がない。