2026.02.20
山々の稜線が幾重にも重なり、雲海の向こうへ身体が震えるような大きな聲が響き渡る――。
お正月のテレビ番組などで、一度はこんな神秘的な映像をご覧になったことがあるのではないでしょうか。
その聲の正体こそ「法螺貝(ほらがい)」。 そして、この法螺貝を吹き鳴らすのが「山伏」です。

ところで、皆さんは「山伏」をご存じでしょうか?
山伏とは、日本にもともとあった自然信仰と仏教が結びつき、日本独自の宗教へと発展した「修験道」の行者のこと。
見た目は、アニメや漫画に出てくる“天狗”を思い浮かべると、少し雰囲気が近いかもしれません。

巡縁では、この日本独特の精神文化「修験道」をもっと身近に感じていただくため、特別な先生をお迎えしました。
世界に誇る桜の名所・吉野にある國軸山金峯山寺、そして熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録にも尽力された第一人者。
著作やラジオを通じ、修験道をわかりやすく伝えてくださる 田中利典先生 です。
当サイトのイメージキャラクター・巡縁ちゃんと一緒に、これからさまざまな角度から修験道の世界を楽しんでいきましょう!
巡縁ちゃん:
りてん先生こんにちは、これからどうぞよろしくお願いいたします!
りてん先生 :
こんにちは。
こちらこそ、これから一緒に「修験道」や「山伏」について学んでいきましょうね。
私は山伏として、奈良県・吉野の大峯山を中心に65年以上修行を続けています。
大峯山は、日本独自の山岳信仰「修験道」の根本道場です。親に連れられて5歳で初めて修行に入り、気づけば人生のほとんどを山伏として過ごしてきました。
巡縁ちゃん:
根本道場とはなんですか?
りてん先生:
根本道場とは、その宗派や流派の中心となる本山や発祥の地、または修行の根本となる場所のことをいいます。
大峯山は「修験道の開祖」とされる役小角(えんのおづぬ)が開いた聖地なんですよ。役小角や大峯山については、またゆっくりお話ししましょう。

「山伏」とは文字どおり「山に伏し、野に伏す」者。
自然そのものを道場として修行するのです。

私は、こうした山伏の行いが、物質に囲まれて忙しく生きる現代の私たちに、驚くほど大きな気づきを与えてくれると感じています。
巡縁ちゃん :
最近は女性のソロキャンプも流行っていますね!
(自然に入ると癒されるんだろうな〜)
山伏修行には、どんな魅力があるんですか?
りてん先生 :
簡単にまとめると、次の3つでしょう。
修行に入る大峯の山中は驚くほど不便です。
水は自由に使えず、食料は全て自分で背負って入山します。
荷物は最小限。蛇口をひねれば水が出て、コンビニがすぐそばにある日常とはまったく違います。
しかし、この「不便さ」こそが、忘れていた感覚を呼び覚ましてくれるのです。
物の「有り難さ」、そして“自分の体で生きている”という実感がじんわりと戻ってきます。
近年は登山ブームですが、山伏の修行は一般の登山とはまったく違います。
私たちにとって山は「登る対象」ではなく「拝む対象」。
一本の木や岩にも聖なるものを観ながら歩みます。
これは、人間を超えた大きな存在と向き合い、その力を祈りによって受け取る行いです。
山伏の修行には、西洋の近代登山には見られない「祈り」と「聖性」の視点が深く根づいています。
つまりこういうことです。 便利で快適な日常から少し離れ、非日常の大自然へ身を置いてみる。
不便さを受け入れ、そこに宿る「聖なるもの」を感じてみる。
すると、私たちがどれほど文明社会に飼い慣らされ、自然や自分自身の“根っこ”から離れてしまったかに気づかされます。

日本は古くから地震や台風など自然の猛威に向き合ってきた国。
だからこそ「自然は人の力ではどうにもならない」という謙虚さを取り戻すことにもつながるのです。
そのための一つの方法として、私は「山伏修行」を強くおすすめしたいと思っています。
巡縁ちゃん :
ソロキャンプとは視点が違いますね!
山道にはよく小さなお祠が点在しますが、お話を聞いて昔の人たちは
現在の私たちとはまた違う感覚で山と向き合っていたんだな、と思いました。
私も自然と触れ合い、「自分の悩みが大したことない」と感じられたことがあります。
山伏修行で山に入ると、もっと自然と仲良くなれそうな気がします。
りてん先生、これからどうぞよろしくお願いします!
