金峯山寺秘仏ご本尊 降臨秘話・第1話【前編】「命がけの信念」

金峯山寺秘仏ご本尊 降臨秘話・第1話【前編】「命がけの信念」

2026.09.27

巡縁 山伏問答・番外編
金峯山寺秘仏ご本尊
降臨秘話

修験道初心者の巡縁ちゃんと、修験道の第一人者・りてん先生の山伏問答。
今回は番外編として、りてん先生から届いた
金峯山寺の秘仏にまつわる「知られざる秘話」をお届けします。

本年2026年4月から6月にかけて奈良国立博物館で開催された特別展
「神仏の山 吉野・大峯 ―蔵王権現に捧げた祈りと美―」。
なんと約19万人もの方が来場し、
当初の予測を3倍近くも上回る大盛況となったそう!

けれど、その熱狂の裏には、
まだあまり知られていない金峯山寺の秘仏・金剛蔵王権現をめぐる物語がありました。

「ご本尊さまは、最初から秘仏ではなかった」

「ご開帳を決断したとき、命をとられると思った」

そして、すべてを動かした一本の“奇蹟の電話”――。

金峯山寺の元総長・田中利典先生だからこそ語れる、
とっておきの秘話。

全4回・7話に分けて、順次公開していきます!

蔵王堂 全景|写真提供 金峯山寺

秋の蔵王堂 全景|写真提供 金峯山寺

前編「命がけの信念」

巡縁ちゃん
りてん先生、「吉野大峯特別展」、大変な熱気でしたね!
りてん先生
巡縁ちゃんも見に行ったのですね。
巡縁ちゃん
大峯山の秘仏をはじめ、数々の貴重な展示に圧倒されましたが、
やはり大画面映像で拝見した金峯山寺(きんぷせんじ)の秘仏ご本尊、蔵王権現さまのダイナミックなお姿が目に焼き付いています。本物にお会いしたいと願う方も多いと思いますが、
吉野ではいつ頃お参りできるのでしょうか?
りてん先生
吉野の金峯山寺では今、
仁王門の大修理をおこなうため、春と秋に
「金剛蔵王権現(こんごうざおうごんげん)さま」の特別ご開帳を行っています。今年の秋も10月24日から11月末までお逢いすることができますよ。
巡縁ちゃん
仁王門の修理のための、特別ご開帳ですか?
りてん先生
はい。実は今回の仁王門修理、
総工費が25億円以上というビッグプロジェクト。
国からの補助もありますが、お寺側も3割以上を負担しなければなりません。そのための資金集めとして、
平成24年から定期的なご開帳がスタートしました。

秘仏ご開帳のはじまり

りてん先生
蔵王堂の秘仏ご本尊さまは、
昭和60年の蔵王堂大屋根昭和大修理が初めてのご開帳で、
その後、役行者1300年遠忌記念事業や金峯山寺の世界文化遺産登録時など、
記念の年にだけ催行される「不定期」な特別拝観でした。それを定期的なご開帳としてスタートさせたのは、
平成24年から始めた「仁王門」解体大修理事業浄財勧進のためのご開帳がきっかけです。実は私が総長時代に決断したことなのですが、
途中で費用が膨らんだり工期が延びたりと大変なこともあり、
今もこうして継続して皆さまにお参りいただいています。
巡縁ちゃん
当初は限られた記念の年にしかお会いできない、
まさに「秘仏」だったのですね。それが今では春と秋、定期的にご縁を結べるようになったのは、
私たちにとってもありがたいです。

蔵王権現さまは、実は秘仏ではなかった!?

りてん先生
ここでちょっとした裏話なのですが……
実は金峯山寺のご本尊さまって、最初から秘仏だったわけではないんです!
巡縁ちゃん
えっ!秘仏じゃなかったんですか!?
りてん先生
明治時代になり、「神仏分離」や「権現信仰禁止」「修験道廃止」という大きな波が押し寄せた際、
金峯山寺は一時廃寺に追い込まれ、
「権現さまを堂外に出して壊しなさい」という厳しい命令まで出されてしまいました。困り果てた当時の僧侶たちが考えた苦肉の策……
それが「ご本尊の前の扉を固く閉ざして隠し、前に鏡を置いて神社としてお祀りすること」だったのです。こうして奇蹟的に取り壊しを回避し、明治19年に無事お寺として復活!
ただ、このときの出来事がきっかけで、
長らく扉が閉ざされた「秘仏」として時を過ごすことになりました。つまり明治から150年もの時を経て、ようやく権現さまは世に出てこられたというワケなんです。7メートルを超えるあのダイナミックで大きなお姿は、
本来たくさんの人々に拝まれるために作られたもの。
秘仏になっていたこと自体が、歴史の試練が生んだ矛盾だったんですね。ですから定期的なご開帳は、
ご本尊さまが本来お持ちの「出会いの場」を取り戻す大切な機会でもあるのです。
巡縁ちゃん
なるほど……
秘仏となった背景には、ご本尊を守り抜くために、
多くの人々の知恵と決意があったのですね。
りてん先生
とは言っても、長年秘仏として守られてきたお姿を定期的に世に出すという決断には、
言い出した私自身
「命をとられるんじゃないか……!」と震えるほどの恐怖がありました。

第一話から、まさに「時代が動いた!」という、
すごいお話が伺えました。次は定期的なご開帳が始まったときのお話ですが、
そのとき、まさかの展開に……!?

 

筆者プロフィール

田中利典
PROFILE

田中 利典

たなか りてん

京都府綾部市・林南院住職。金峯山寺長臈、種智院大学客員教授。1955年京都府生まれ。龍谷大学、叡山学院卒。修験道の歴史や祈り、受け継がれる文化を、誰もが親しみを持てる言葉で伝えている。

\ 今年も、蔵王権現さまにお会いできます /
令和8年秋
秘仏ご本尊特別御開帳

国宝・仁王門の大修理勧進のため、国宝・蔵王堂の秘仏ご本尊
「金剛蔵王大権現」が特別ご開帳されます。

期間:2026年10月24日(土)~11月30日(月)
拝観時間:8:30~16:00
特別拝観料:大人1,600円/中高生1,200円/小学生800円

※法要などにより、一時的に入堂が制限される場合があります。

⛰️ 修行体験をしてみたい方はこちら

金峯山寺では、修験道の世界にふれられる体験修行を公式ホームページで紹介しています。5月から10月の毎月一回、一般の方を対象に大峯修行体験が開催されており、女性が参加できるコースも設けられています。大峯山での修行に興味のある方は、ぜひご覧ください。

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