金峯山寺秘仏ご本尊 降臨秘話・第2話【後編】「御本尊のお導き」

金峯山寺秘仏ご本尊 降臨秘話・第2話【後編】「御本尊のお導き」

2026.10.11

後編「御本尊のお導き」

「ただ見るのではなく、拝む」

りてん先生の願いから生まれた「発露の間」は、
今も参拝者の心の拠り所となっています。

でも先生には、もうひとつ、
胸の奥にずっと抱えていた心配事があったようで……

権現さまのお体は大丈夫……?

りてん先生
平成24年の春からはじまった、
仁王門の大修理勧進と秘仏ご本尊・蔵王権現さまの定期ご開帳。実は「祈りのあり方」のほかに、
もうひとつ大きな心配事がありました。それが「定期的にご開帳を行うことによる、お像へのリスク」です。
巡縁ちゃん
たしかに、光や空気に長くさらされると、
仏様へのダメージも心配ですよね。
りてん先生
これまで「もともと明治までは秘仏ではなかった」とお話ししてきましたが、
かといって昔のご開帳は、
今のように扉を全開にしてライトアップまでするような形ではありませんでした。もちろん定期ご開帳をはじめるにあたり、
照明を尊像への影響がないLED光源に変更するなど、
万全の対策は取っていました。それでも春と秋の長期間、毎日ご開帳するとなると
「権現さまのお体に負担がかかるのでは……」と
気が気ではありませんでした。
秘仏ご開帳中の蔵王勤行

秘仏ご開帳中の蔵王勤行

430年ぶりの修理。秘仏だから見えなかった傷み

りてん先生
そこで文化庁や奈良県の文化財保存課に相談し、
平成25年にお像の徹底調査を実施。翌26年には、約2500万円をかけて
剥落(はくらく)止めの大切な修理を
行うことになったのです。
巡縁ちゃん
こちらもすごいプロジェクトですね!
りてん先生
はい。ただ、
この修理が必要になったのはご開帳のせいではなく、むしろ逆でした。権現さまは造立された1590年(天正18年)頃から
実に430年もの間、本格的な修理が行われてこなかったため、
積年の傷みがご開帳によって初めて浮き彫りになったのです。
巡縁ちゃん
秘仏として守られてきたがゆえに、
傷みも見えなかったんですね。
りてん先生

そうですね。

文化庁の方からも
「まさに怪我の功名(怪我の功)ですね」と言われる出来事でした。

しかし、「怪我の功名」で済ませるにはあまりにも勿体なく、不遜なこと。
私はここでも「権現さま自らが動かれたのだ」と強く感じました。

ずっと秘仏として大切に守られてきたからこそ、
普段なかなか直視できなかったお身体の傷み。

「そろそろ傷んできているから治しておくれ!」
という権現さまの声が聞こえたような気がしてならないのです。

430年ぶりの修理、そして
「権現さまが動かれた」という、りてん先生の確信。

ご開帳は単なる公開行事を超えて、
権現さまご自身の意志によって動いているのかもしれません。

次のお話では、いよいよその「ご意志」が、
さらに大きな形で現れてきます!

筆者プロフィール

田中利典
PROFILE

田中 利典

たなか りてん

京都府綾部市・林南院住職。金峯山寺長臈、種智院大学客員教授。1955年京都府生まれ。龍谷大学、叡山学院卒。修験道の歴史や祈り、受け継がれる文化を、誰もが親しみを持てる言葉で伝えている。

\ 今年、蔵王権現さまにお会いできます /
令和8年秋
秘仏ご本尊特別御開帳

国宝・仁王門の大修理勧進のため、国宝・蔵王堂の秘仏ご本尊
「金剛蔵王大権現」が特別ご開帳されます。

期間:2026年10月24日(土)~11月30日(月)
拝観時間:8:30~16:00
特別拝観料:大人1,600円/中高生1,200円/小学生800円

※法要などにより、一時的に入堂が制限される場合があります。

⛰️ 修行体験をしてみたい方はこちら

金峯山寺では、修験道の世界にふれられる体験修行を公式ホームページで紹介しています。5月から10月の毎月一回、一般の方を対象に大峯修行体験が開催されており、女性が参加できるコースも設けられています。大峯山での修行に興味のある方は、ぜひご覧ください。

▶ 金峯山寺の体験修行についてはこちら

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