2026.03.28
知人に比叡山延暦寺の話をしていた時、兵庫県姫路市にも“西の比叡山”と呼ばれる場所があるとお聞きしました。その名も、「書寫山圓教寺」。
古来より霊峰と言われた“山全体が聖地”の書写山中腹にあり、さらにあのハリウッド映画「ラストサムライ」の撮影にも使われた別の意味でも「聖地」であるとのこと。
それはぜひ行ってみたい!と思い、チャンスができた年末に参拝してみたところ、想像以上のワンダーランドでした。
今回は、そんな書寫山圓教寺の歴史や見どころ、実際に参拝した様子をご紹介します。
なお、本家・比叡山については、こちらでご紹介しているので、ぜひご覧ください。

書写山圓教寺(しょしゃざんえんぎょうじ)は、兵庫県姫路市の書写山にある天台宗の寺院。平安時代、性空上人によって開かれました。西日本有数の天台宗の修行道場として知られ、「西の比叡山」とも称されています。
摩尼殿(まにでん)、大講堂、食堂(じきどう)などの建物が有名で、いずれも重要文化財に指定されています。
摩尼殿は懸造(かけづくり)で、まるで清水寺を思わせる壮大さ。大講堂と食堂、常行堂が並ぶ「コの字」型の伽藍配置は、教育と生活を一体化させた集団修行の場であった中世天台宗寺院の姿を今に伝えています。

自然豊かな参道はハイキングコースとしても人気があり、徒歩が難しい方はロープウェイでもアクセス可能です。近年では映画「ラストサムライ」や大河ドラマ「武蔵」「軍師官兵衛」など、数々の作品のロケ地としても知られ、国内外から多くの参拝者が訪れます。とくに秋の紅葉は美しく、西国三十三所第27番札所としても信仰を集めています。

圓教寺の開祖である、天台宗の僧「性空上人」。貴族の家系に生まれながらも比叡山で修行し、慈恵大師(元三大師)良源の元で出家した方ですが、様々な「すごい」エピソードがあります。

難産続きで子を諦めようと思っていた母から、不思議に安産で産まれた。
さらに、生まれたときに左手に一本の針を握りしめていた。針が糸を導くように、この子は人々を導くようになる普賢菩薩の生まれ変わりだと信じられた。
あるとき重い病にかかったが、夢の中で童子(観音様だった)から「湯原に湯治へ行け」とお告げを受け、発見した湯原温泉で病を完治させた。
霊宝書写山には毎年花のころになると、天女がまい降りました。その姿を桜の生木に如意輪観音像を彫ったそう。(この本尊を納めるお堂が円教寺摩尼殿(えんぎょうじまにでん)となりました)
そして、98歳という高齢まで生きられましたが、最後まで座禅を組み、西(極楽浄土)を向いたままの姿で大往生をしたのだと伝わります。
権力や富を一切求めず、ただひたすらに修行した「聖」の姿は、当時から多くの人から崇敬を集めました。時の花山法皇も、性空上人の高徳を聞いて二度も書寫山を訪れたと言われています。
圓教寺がある書写山は、古来より霊峰として知られていました。ところで、「書写山」という少し変わった名前の由来には、2つの説があるそうです。
昔、この山の頂に素盞嗚尊(すさのおのみこと)が出雲から戻る途中に一泊したという伝説があります。そのためこの山は「素盞ノ杣(すさのそま)」や「素盞山(すさやま)」と呼ばれていました。
この「素盞(すさ)」が転じて「書写(しょしゃ)」になったという説です。実際、この地域はかつて「曽左村(そさむら)」と呼ばれており、この「曽左」も素盞に由来するといわれています。
仏教の発祥地インドには、お釈迦様が『法華経』や『無量寿経』など多くの大乗経典を説いたとされる「霊鷲山(りょうじゅせん)」があります。
書写山には釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)の土をひと握りし、空から落とし、その土によって作られたという伝説があります。また性空上人がこの地を訪れた際、その山の姿や神聖な雰囲気に心を打たれ、「まるで霊鷲山をそのまま写したような山だ」と感じたことから、「書写山」と名付けられたともいわれています。
圓教寺は山の中にあり、近くまで車で行くことはできません。境内の入口までは徒歩またはロープウェイで向かうことになります。
◎公共交通機関の場合:JR「姫路駅」または山陽電鉄「山陽姫路駅」で下車し、神姫バスの「書写山ロープウェイ行き」に乗車。約30分でロープウェイ乗り場に到着します。
◎車の場合:山陽自動車道「山陽姫路西IC」を下りると、約15分でロープウェイ駅近くの駐車場に到着します。

ロープウェイは8:30~、15分ごとに発車しています。終発は時期や曜日によって変わります。一番早い冬季の平日の上りは16:45発が最終です。乗車時間約4分で、料金は大人往復1,200円、片道は700円です。
山上駅から圓教寺の摩尼殿までは約1km、歩いて20分ほどかかります。アップダウンのある山道なので、徒歩に自信のない人はバスの利用がおすすめです。
駅を降りた少し先にシャトルバスが待ってくれていて、1時間に約3本、往復500円で利用できます。
今回筆者たちは、年の瀬も押し迫った12月の末に訪れました。到着したのはお昼少し前。圓教寺の混雑ピークである紅葉シーズンは過ぎていたものの、年末の休暇期間に入っていたためか、境内はほどよいにぎわいを見せていました。
到着すると、ちょうどロープウェイの乗車受付が締め切られたタイミング。図らずも、ほぼ先頭で次の便に乗ることになりました。
10分ほど待つと、係の方が案内してくれます。お子さんに混じってせっかくなので窓側へ。ゆっくりと動き出すと、約4分間の空の旅。のどかな田園風景を抜け、徐々に山の中へ入っていきます。ロープウェイ、やっぱり楽しいです!
山頂駅に到着すると、空気が一変。とにかくさわやかで、思わず「これぞ聖地!」と言いたくなるような雰囲気です。道中には「一隅を照らす」と刻まれた石碑もあり、比叡山でも見た最澄の言葉に、「本当に西の比叡山なんだなぁ」と気持ちが高まります。
ここから摩尼殿までは徒歩で約20分。今回は足にあまり自信がなかったため、迷わずシャトルバスを選択しました。とはいえ、一緒にロープウェイに乗ってきた方の多くは、そのまま参道へ。皆さん歩くのだなぁ…と感心しつつ、バスは出発です。
するとすぐに、「これは乗ってよかった…!」と思うような山道に突入。車でもなかなかハードな道を進み、あっという間に圓教寺の入口に到着しました。
バスを降りて、歩くことしばし。すぐに摩尼殿に到着しました。清水寺と同じ懸造りの建物、見上げると思わず感嘆の声が出ました。幾度か火災で焼失しているそうで、現在のものは昭和8年に再建されたもの。それでも、平安時代からこんな複雑な木組の建物が作られていたなんて、本当に驚きですよね。

本尊は六臂如意輪観世音菩薩(ろっぴにょいりんかんぜおんぼさつ)。残念ながら性空上人が桜の立木に彫った「立木観音」は火災で焼失してしまったそうで、現在の像は室町時代に作られたものだそう。この日は非公開でしたが、毎年1月18日の鬼追いの日に開扉されるそうです。

お堂の中を見たり、外の景色を眺めたりしていると、内陣でお経が始まりました。入らせていただくと、何とお経は動画にてライブ配信中!歴史ある場所なのに、現代の良いところは取り入れていらっしゃる姿を見て、ますます好きになりました。
摩尼殿を後にして、再び境内を散策。ラストサムライが撮影されたという、三つの堂方面へ。ゆっくりと山道を進んでいくと、10分ほどで到着しました。
ひらけた広場を囲むように、大講堂、食堂、そして常行堂という3つの建物がコの字を描くように立っています。これは中世の天台宗寺院の特徴だとか。
まず、大講堂。こちらは圓教寺の本堂に当たる堂で、講義や論議が行われる修行と学問のための建物とのこと。内陣には釈迦三尊像が安置されているそうで、二階建ての背の高い建物です。

正面にあるのは、食堂。その名の通り、元々は修行僧の寝食のための建物だったそう。こちらは靴を脱いで、内部に入ることができます。長さが約40メートルもある二階建ての建物は創建された平安末期には大変めずらしいものだったそう。1階では写経を体験でき、2階は寺宝館になっています。

最後は、常行堂。ひたすら阿弥陀仏の名を唱えながら本尊を回る「常行三昧」という修行をするための道場だそうですが、表から見ると舞殿のように見えます。それもそのはず、この舞台は大講堂の釈迦三尊に舞楽を奉納するために設けられたのだそう、…なんだか、すごい。積み重ねられた人々の願いを感じました。

ラストサムライは、この三つの堂周辺で多くのシーンが撮影されました。
確かに、思わず映画撮りたくなるくらい、かっこいいです。
食堂の中はとにかく居心地が良く、何とも言えない雰囲気。時間があったら写経にも挑戦してみたかったのですが、次の予定があったので、今回はここで断念しました。
今回、時間の関係で断念したのですが、圓教寺には他にも魅力的な場所がたくさんあります。
中でも奥之院は、開山の性空上人をまつる開山堂や、開山の性空上人に付き添って仕えた二童子をまつる護法堂、和泉式部が性空上人に詠んだ歌の碑など、見どころがたくさん。特に開山堂には、左甚五郎作と伝わる「力士」の迫力ある像が見られます。伝説によると、元々は四隅すべてに彫られていたのに、建物の重さに耐えかねて一体が逃げ出したため、現在は三体しかいないのだとか。帰宅後に写真を見たのですが、思わず「ヒッ!」となるくらい、リアルで迫力ある像です。次回訪れた際はぜひ奥之院まで挑戦してみたいと思いました。

帰り道、山門へ向かう途中で鐘を発見。多くの人が挑戦していましたが、なかなかきれいに鳴らせていない様子。そこで、比叡山でも披露した(?)バックスイングを試してみると——
見事、山に響き渡るやさしい鐘の音を鳴らすことができました。
ロープウェイ乗り場に戻ると、ちょうど発車したばかりで15分待ち。ふと見ると「かわらけ投げ」があったので、最後に挑戦してみることに。結果は4枚中1枚成功。上出来です。
見どころが多く、何より境内全体に穏やかな空気が流れていた圓教寺。想像以上の“心がほどけるワンダーランド”、まさに聖地と呼ぶにふさわしいものでした。
〒671-2201 兵庫県姫路市書写2968
アクセス|神姫バス「書写ロープウェイ行」で終点下車(約30分)ロープウェイ「山上駅」
入山料|500円(中学生以上)(小学生 300円、未就学児童 無料)

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